猫と暮らしていると、ふとした瞬間に「えっ、今の顔…どうしたの!?」と思うことはありませんか?
目を見開き、口を半開きにして、まるで何かに驚いたような、でもちょっと間の抜けたようなあの表情──。
それは、「フレーメン反応」と呼ばれる、猫の本能的な行動かもしれません。
この記事では、フレーメン反応の仕組みや理由、よくあるシチュエーション、飼い主としての対処法までを、やさしく丁寧に解説します。
フレーメン反応って、どんな顔?

フレーメン反応は、猫が特定のニオイを嗅いだときに見せる表情で、
- 口を半開きにして静止する
- 目が据わるような鋭い視線になる
- 鼻が少し上を向くような表情になる
といった“変顔”のような反応を指します。
初めて見た飼い主さんは、「今の顔、何かくさいニオイでもしたのかな?」と驚くかもしれませんが、これは猫の嗅覚の一種の“分析行動”なのです。
実は“くさい”からじゃない!?猫が口を開ける本当の理由
猫のフレーメン反応は、「嗅いだニオイが強烈で不快だったから」と誤解されがちですが、実際にはそうではありません。
この反応の鍵を握るのが、「ヤコブソン器官(鋤鼻器:じょびき)」と呼ばれる特殊な感覚器官です。
この器官は、猫の上あごの奥(上あごの裏側あたり)にあり、フェロモンなどの化学物質を検出するセンサーとして働いています。
猫は、フェロモンを含むニオイを感じたときに、
口を少し開けてそのニオイをヤコブソン器官に送り込み、成分を“分析”しようとするのです。
その動きが、まるで変顔のように見える──それが、フレーメン反応の正体です。
どんなときにフレーメン反応が起きるの?
猫がフレーメン反応を示すシーンには、いくつかのパターンがあります。
他の猫のおしっこやマーキング跡
もっともよく見られるのが、他の猫のおしっこやスプレー行動の跡を嗅いだときです。
尿には猫特有のフェロモンが多く含まれており、それを分析するためにフレーメン反応を起こします。
飼い主の靴下・服・枕など
意外と多いのが、飼い主の使用した衣類や枕など。
人間の皮脂や汗にも独自のニオイ成分があり、猫にとっては「分析対象」となりやすいのです。
特に、帰宅後すぐの足のニオイなどには、高確率でフレーメン反応が見られます(ちょっと恥ずかしいですが…)。
動物病院帰りのキャリーケース
獣医さんに行ったあとなど、病院のニオイがついたキャリーケースに対して反応することもあります。
これは、他の猫や動物のニオイが染みついていることが多いためです。
飼い主が心配する必要はある?

まったく心配いりません。
フレーメン反応は猫にとって自然な行動であり、身体に悪影響を及ぼすものではありません。
ただし、以下のようなケースでは注意が必要です。
- フレーメン反応ではなく、口呼吸をしているように見える
- 頻繁によだれを垂らす、吐く、口を開けたまま苦しそうにする
これらは呼吸器や口腔内の病気の可能性もあるため、フレーメン反応と混同せず、症状が続くようなら獣医さんに相談しましょう。
フレーメン反応を見たときの接し方
猫がフレーメン反応をしているときは、情報を一生懸命分析している状態です。
あまり話しかけたり、なでたりせず、そっと見守ってあげるとよいでしょう。
写真を撮るなら今!と思うかもしれませんが、フラッシュなどは避けて、静かにパシャっと一枚だけにしておくと安心です。
ちょっと豆知識:他の動物にもあるフレーメン反応
実は、フレーメン反応は猫だけでなく、馬・ライオン・ヤギ・ゾウ・キリンなど、さまざまな動物でも確認されています。
それだけ「フェロモンを分析する」という行動は、動物にとって重要なコミュニケーション手段なのです。
フレーメン反応を楽しもう。猫の奥深い“表情”の世界

猫のフレーメン反応は、単なる「変な顔」ではありません。
そこには、本能・嗅覚・そして猫なりの“世界の感じ方”が詰まっています。
その表情を見かけたら、
「いま何を感じてるのかな?」「どんな情報を読み取ろうとしてるんだろう?」
そんなふうに猫の世界にそっと寄り添ってみるのも、飼い主としての醍醐味かもしれません。
最後にひとこと
フレーメン反応は、猫の個性が垣間見える貴重な瞬間です。
日常の中で出会えたなら、ぜひやさしく見守ってあげてくださいね。