猫を飼っている家庭なら、「掃除機をかけるたびに猫が逃げ出す」「掃除機を見るだけでシャーっと威嚇する」といったシーンに出くわしたことがあるのではないでしょうか。まるで掃除機と猫が終わりのない戦いを繰り広げているかのようです。なぜ猫は掃除機を怖がるのでしょうか?今回はその原因と、猫が少しでも安心できるようにするための解決法をご紹介します。
猫が掃除機を嫌う3つの理由
1. 大きな騒音が「捕食者の襲来」に聞こえる
猫の聴覚は人間よりもはるかに敏感で、掃除機の「ゴォーッ」という低音や高周波のモーター音は、動物の唸り声のような不快な刺激に聞こえる可能性があります。特に昔ながらのサイクロン型や紙パック式掃除機は音が大きいため、猫にとって強い恐怖や警戒心を引き起こしやすいと考えられます。
2. 突然の動きが警戒心をあおる
掃除機は急に方向転換したり、家具にぶつかってガタンと音を立てたりします。猫にとって予測不可能な動きをする物体は「危険な存在」とみなされやすく、近づくだけで逃げ出す原因になります。
3. 過去の経験がトラウマになっている
子猫の頃に掃除機で驚かされた経験や、掃除機の近くで嫌なことがあった記憶があると、成猫になっても強く警戒することがあります。猫の記憶力は意外と優秀で、一度「怖いもの」と認識すると克服するのが難しいこともあります。

掃除機ストレスが猫に与える影響
掃除機の時間になると猫が隠れてしまう、息を潜めて震えている、鳴き声をあげるなどの行動が見られるときは、猫が強いストレスを感じているサインです。強いストレスが続くと、食欲不振や下痢、毛づくろい過多によるハゲなど、体調不良につながることもあります。 掃除のたびにこうした状態が続くと、飼い主としては心配になりますよね。
猫と掃除機の「共存」を目指すコツ
1. 掃除機を出しただけで慣れさせる
いきなり動かさず、まずは部屋に掃除機を置いておくだけの日を作ります。猫が掃除機に近づいたら褒めておやつをあげるなど、「怖い物ではない」という印象付けを少しずつ行うことが大切です。
2. 音に少しずつ慣らす
掃除機の音量を最小にして、短時間だけ動かす練習をしてみましょう。いきなりフルパワーで使うと逆効果になるため、「今日は30秒だけ」「明日は1分」と段階的に慣らすのがコツです。
3. 別部屋に避難させる
掃除の時間は猫を別の部屋に移動させるのも有効です。お気に入りのベッドやおやつを用意しておくと、掃除機タイムを「リラックスタイム」と結びつけることができます。
4. 静音タイプの掃除機に買い替える

最近はペット対応の静音掃除機が増えています。65dB以下の静音設計の掃除機なら、猫のストレスを軽減しやすいでしょう。掃除機ロボット(ルンバなど)も低音設計のものを選べば、意外と猫がすぐ慣れることもあります。
5. 飼い主の行動をゆっくりにする
掃除機を急に動かしたり、猫を追いかけるような動きはNGです。「猫の視界に入らないように動かす」「ゆっくりした動きで掃除する」だけでも恐怖心を減らせます。
掃除機嫌いを克服するための「小さな習慣」
- 掃除機を使う前に猫に声をかける
「これから掃除するよ」と声をかけるだけでも、猫が驚くのを防げます。 - 短時間で済ませる
10分以上の長時間稼働は、猫にとって拷問のように感じられます。要点だけ素早く掃除する習慣をつけると、猫の負担が減ります。 - 掃除機後にご褒美タイム
掃除が終わったら遊びやおやつをあげることで、「掃除機=嫌な時間だけじゃない」と学習してくれます。
掃除機ロボットは猫の敵か味方か?

最近ではロボット掃除機を猫が乗りこなす動画が話題になっていますが、あれは「特殊な例」です。多くの猫は最初、ルンバのような動く物体を警戒します。
ただし、動きが一定で飼い主の手動操作よりも予測しやすいため、時間をかけて慣れる猫も多いのが特徴です。試す際は、いきなり猫の目の前で動かすのではなく、別室で稼働音に慣れさせることから始めると良いでしょう。
まとめ:掃除機は「敵」から「無害な存在」へ
猫が掃除機を怖がるのは、本能的な警戒心と聴覚の鋭さによるものです。無理に慣れさせようとせず、静音掃除機や避難部屋の活用、音慣れトレーニングなどを組み合わせることで、猫と掃除機の関係は少しずつ改善していきます。
「掃除機=ストレスの時間」から「掃除機=気にしない存在」になるまでには時間がかかりますが、毎日の積み重ねが猫の安心感を育てます。
愛猫が落ち着いた表情で掃除を見守る日が来るかもしれません。