みなさんは、猫の死因のトップ3をご存知でしょうか。
1位:ガン 38%
2位:腎不全 22%
3位:伝染病生腹膜炎 10%出典:日本アニマル倶楽部「犬・猫 死亡原因病気TOP10」
なのだそうです。
ここで注目したいのは、ガンに並んで割合が高い2位の「腎不全」です。 腎不全にかかっている猫の多くは、5〜6歳で急性腎不全になり、5〜7割が改善せずに慢性化しているのだそう。 日本ベェツ・グループの調査によると、8歳で約8%、10歳で約10%、12歳で24%、15歳以上で30%の猫が慢性腎不全を発症するという集計結果もあるようです。
しかも、これまでは原因不明の腎不全が大半を占めていたのだとか。
ところが、最近この「原因不明」に対して、いろいろなことが解ってきたそうです!
猫の腎不全とは
まずは、猫の腎不全について知りましょう。
腎不全とは、腎臓の機能が低下し、働きが異常になった状態で、急性腎不全と慢性腎不全の2種類があります。慢性腎不全とよばれるのは、3ヶ月以上続く尿異常、腎形態異常、もしくは腎機能が正常時に比べ約60%未満まで低下した状態を指します。高血圧や糖尿病などの生活習慣病以外に感染症などが原因となります。
そして、主な症状は
・第一段階:この症状がでてきたら要注意!
薄い尿を大量に出す。
喉が渇く。・第2段階:尿毒症になってる可能性あり
涎を流す。胃液を吐く。
食べたものまで吐く。
食欲が無い。痩せてきた。・第3段階:尿毒症です
ぐったりして、寝てばかりいる。
吐き気がとまらない。
ふらつく。
※愛猫が腎不全かどうかオーナーチェックしたい方はこちらのサイトもご参考ください。
しかし、オーナーが気づくほどの症状が見られた時にはすでに手遅れな状態ということが多いのだそう。 しかも、これまでは原因不明の腎不全が大半を占めていたそうです。
ところが昨年(2016年)の秋、東大の研究によりその原因を解明できたとのニュースが飛び込んできました。
東京大学大学院医学系研究科の宮崎徹教授らの研究グループは、自ら発見したタンパク質AIMが、直接腎臓に働きかけ急性腎障害を治癒させることを明らかにし、Nature Medicine誌に発表した(文献6)。急性腎不全が生じると、腎臓の中の尿の通り道(尿細管という)に “ゴミ”(細胞の死骸)が詰まり、そのことが腎機能の低下を招く引き金となることが知られているが、腎臓の機能が低下すると、通常血液中に存在するAIMが活性化し、尿中に移行してゴミを掃除する役目を果たす。それにより迅速に尿細管の詰まりが解消され、その結果、腎機能は速やかに改善することを明らかにしていた。
今回本研究グループは、ネコのAIMはマウスやヒトのAIMと異なる特徴を持ち、急性腎障害が生じても活性化せず尿中に移行もしないことを見出した。したがって、ネコは血液中にAIMをじゅうぶん持っているにもかかわらず、急性腎障害が生じても腎臓の機能は回復せず、そのまま慢性腎不全へと進行してしまう可能性が高いことが明らかになった。
この時「数年で猫の薬が使えるようになる見込み…」 とされていました。 また、これは急性腎不全の段階で然るべき処置をして、慢性化しないための薬ができるかもしれないというニュースと捉えることもできそうですね。
世界初!腎機能低下を抑制する猫用新薬が4月から実用化へ
そして先日、なんと「東レ株式会社」が早くも慢性腎不全に有効な新薬を作ってくれたそうです。
東レの発表によると
猫の慢性腎臓病は病理組織学的に間質の線維化と炎症が主体であり間質の線維化が腎機能低下と最もよく相関することが分かってきました。腎臓の線維化は、炎症や虚血、低酸素状態、線維化によるさらなる虚血と低酸素状態…という風に悪循環を形成して進行していきます。つまりこの腎線維化プロセスを抑制することができれば、腎機能の低下を抑制できると考え、開発に着手しました。
ラプロス®は、ベラプロストナトリウムを有効成分とする経口プロスタサイクリン(PGI2)製剤であり、血管内皮細胞保護作用、血管拡張作用、炎症性サイトカイン産生抑制作用及び抗血小板作用を有しています。これらの薬理作用によって腎臓の虚血および低酸素状態を改善させると考えられており、腎機能の低下を抑制し臨床症状を改善させます。
国内で「腎機能低下の抑制」を効能効果として承認を取得した薬剤はラプロス®が初めてであり、猫医療に心強い治療選択肢を提供することができたと考えています。
これを読むと、こちらは慢性腎不全に対する新薬と読み取れそうですね。
東大の研究は急性腎不全の実験について触れていたので、別のアプローチなのでしょうか。あいにく編集部には獣医さんがいないため、明確にはわかりませんが、猫を愛する身としては、こんなに嬉しいことはありませんね。
このお薬は今年の4月から「共立製薬株式会社」を販売元として発売するそうです。
しかも、腎機能低下を抑制する猫用の治療薬は世界初なんだそう。すごいですね。
今後の動物医療の発展に期待
このところ空前の猫ブームと言われていますが、多くのオーナーが我が子のように愛している猫ちゃんと、少しでも長く一緒に暮らせるよう、今後の動物医療の発展に期待したいですね。
そして、オーナーである私たちが猫の健康について日頃からしっかり考える力を養えるよう、もふねこ編集部も微力ながら情報を発信していきたいと思っています。
日頃から、もふねこ編集部の猫さんたちも原因不明の体調不良で獣医さんにお世話になることがあります。もしも、それが腎不全の前触れたとしたら…と考えると、この薬がこのまま安全に広く利用され、腎不全で苦しむ猫さんが減ることを期待してやみません。