驚くべき五感の世界と、わたしたちにできること
猫と暮らしていると、ふとした仕草や反応に「今、何が見えているの?」「どうしてそんな音に反応するの?」と不思議に思うことはありませんか?
猫の視力や聴力は、人間とはまったく異なる世界を見て、聞いて、感じています。
この記事では、猫の五感の中でも特に重要な「視力」と「聴力」について、科学的な根拠とともにわかりやすく解説し、飼い主として知っておくべきポイントをお伝えします。
猫の視力はどのくらい?

「視力が悪い」は本当?そのウワサの真相
よく「猫は視力が悪い」と言われることがあります。
これはある意味では事実です。人間の視力を1.0とした場合、猫の視力は0.1〜0.2程度とされています。
つまり、猫は人間ほどはっきり細かくものを見ることはできません。
では、なぜそんな視力でも日常生活に困らないのでしょうか?
猫の視界の特徴
- 広い視野角:猫の視野は約200度以上あり、人間の180度を超えています。
- 動きに敏感:猫の目は、動くものを捉える力に長けています。遠くのネズミがチョロチョロと動いたら、即座に反応できます。
- 暗闇でもよく見える:猫の目は暗視能力が非常に高く、人間の6〜8倍の暗闇でも視認可能です。
これは「タペタム層」という、光を反射する構造が網膜の裏にあるからです。
色は見えているの?
猫は色覚が弱いとされています。
人間が「赤・青・緑」の3色を感じるのに対し、猫は青と緑系の2色しか認識できない2色型色覚。
そのため、赤やピンクのオモチャより、青や緑のほうが猫にとっては目立つ可能性があります。
猫の聴力はどれくらい?

実は「犬よりも上」!?驚異的な耳の性能
猫は視力が弱い代わりに、聴力が非常に優れています。
人間の可聴域(聞こえる周波数)はだいたい20Hz〜20,000Hzですが、猫は60Hz〜65,000Hzもの音を聞き取れるのです。
これはなんと犬(約45,000Hz)よりも高い!
猫の耳は「パラボラアンテナ」
猫の耳は、180度以上動かせる構造になっていて、左右別々に音の方向をキャッチすることができます。
その動きはまるでパラボラアンテナのよう。
- 高い音に敏感:ネズミの鳴き声や昆虫の羽音など、人間には聞こえない高周波の音もキャッチ。
- 方向定位能力が高い:音がどこから来ているかを0.1秒以内に判断できると言われています。
音に敏感すぎる一面も
優れた聴力は、反面大きなストレスの原因にもなりえます。
掃除機の音や、大きな声、金属音などは、猫にとって「爆音」に感じることも。
静かな環境を保つことは、猫のQOL(生活の質)を守る上でとても重要です。
【まとめ】視力も聴力も、「人とは違う」だけ

猫の視力や聴力は、私たち人間と比べると
「劣っている」「優れている」というより、目的が違うというべきでしょう。
- 猫の目は、昼間よりも薄暗い場所に強い
- 細かい文字や静止物は苦手でも、動くものにはめっぽう強い
- 色はあまり見えなくても、動きや形で判断
- 音は人間には聞こえない高音も含め、多方向から正確に聞き取る
飼い主が知っておくべきポイント
1. おもちゃ選びは「動き」と「音」で
静かに転がるボールよりも、シャカシャカ音が鳴ったり、ヒュンと動くものの方が夢中になります。
特に高音の鳴るおもちゃは、猫にとって刺激的。
2. ストレスフリーな環境作り
- テレビや音楽のボリュームは控えめに
- 留守番中の静けさを意識(例:電子音をオフに)
- 大きな声で怒るより、静かに注意を引く工夫を
3. 視力が落ちても慌てない
猫は元々視力に頼らず生活しているため、
老化で多少視力が落ちても、急に生活が不便になることは少ないです。
ただし、動きに不安が出てきたら段差を減らすなど配慮してあげましょう。
さいごに:猫の世界を「想像する力」が絆を深める
猫の視力や聴力を知ることは、
「猫ってすごい!」と驚く以上に、彼らの世界に寄り添うきっかけになります。
わたしたち人間には見えないもの、聞こえない音。
そんな感覚の中で猫たちは、毎日一生懸命、生きています。
そのことをほんの少し想像するだけで、
いつもの日常が、もっと深くて温かいものに変わっていくかもしれません。
あなたの猫が、今日どんな世界を見て、何を聞いているか。
少しだけ、想像してみませんか?