猫同士が取っ組み合いを始めたとき、思わず「やめてー!」と声をかけたくなる瞬間、ありませんか?
多頭飼いの暮らしでは、仲良しなだけでは済まない関係性も見えてきます。とくに、初対面の猫同士や相性に差がある場合は、ケンカなのか遊びなのかの見極めがとても難しいものです。
今回は、“止めるべきケンカ”と“見守ってよいケンカ”の違い、そして飼い主にできるサポートの方法について、やさしく丁寧に解説していきます。
ケンカ?それともじゃれ合い?見分けるポイント

まずは、猫同士のやりとりが本気のケンカなのか、それともコミュニケーションの一環としての“じゃれ合い”なのかを見極めるために、以下のようなポイントに注目してみましょう。
✅ 見守っていい「じゃれ合い」の特徴
- 交互に攻撃し合っている(一方的でない)
- 途中で間がある(一瞬離れる→また近づくなど)
- 鳴き声が少ない、または穏やか
- 耳やヒゲがリラックスしている
- その後も一緒にくつろいでいることが多い
じゃれ合いは、いわば猫同士の“社会性を育てる遊び”でもあります。力加減の練習をしていたり、順位関係を穏やかに確認し合っているケースもあるのです。
⚠️ 要注意!止めるべきケンカの特徴
- 一方的に攻撃している/逃げ回っている
- 低い唸り声、または叫ぶような悲鳴
- 耳を伏せている(イカ耳)/ヒゲが前に突き出ている
- 毛が逆立っている/しっぽが膨らんでいる
- どちらかがトイレに行けなくなっている/食欲が落ちている
こうした場合、強いストレスや本気の争いが起きている可能性があります。放置すると関係が悪化するどころか、けがや健康被害につながるリスクもあるため、早めに介入が必要です。
ケンカが起きやすいシチュエーションとは?

猫は基本的に単独行動を好む動物です。テリトリー意識や社会的順位の確認などから、特定の条件下ではケンカが起きやすくなります。
1. ごはんやトイレが足りないとき
猫は資源(ごはん、水、トイレなど)をシェアするのが苦手です。ごはんの時間になると、いつもよりピリピリした雰囲気になるのはそのせい。
→ 猫の数+1以上のリソースを用意してあげると、争いの火種をぐっと減らせます。
2. 新入り猫を迎えた直後
既存の猫にとって、新入りは“侵入者”のように感じられることがあります。
いきなり顔を合わせるとトラブルになるため、導入にはステップを踏んだ“ならし期間”が重要です。
3. 発情期やホルモンの影響
特に去勢・避妊が済んでいない猫同士では、性ホルモンの影響によって争いが激しくなることもあります。
→ 避妊・去勢手術は、身体の健康だけでなく、穏やかな関係性のためにも効果的です。
ケンカが始まったら、どう対処すべき?
いざ猫同士が取っ組み合いに! そんなとき、飼い主ができる対応について見ていきましょう。
🟡 軽い取っ組み合いなら、すぐに止めず「そっと見守る」
先ほど述べたような「じゃれ合い」の範囲なら、手出しはせずに少し距離をとって見守りましょう。そこで関係性が少しずつ深まることもあります。
ただし、猫が明らかに嫌がっている、しつこく追い回している、長時間続くといった場合は、早めに止めましょう。
🔴 本気のケンカになったら、即座に中断を
- 布やクッションを投げて音を立てる(猫に当てない)
- 大きな音を出して注意をそらす
- 可能ならスプレーボトルで水を軽くかける
- ケージや部屋を分けて、冷却期間をとる
※ただし、素手で割って入るのは絶対NGです!
本気の猫の爪や牙は、人間の皮膚に簡単に傷をつけてしまいます。
ケンカが続く場合、根本的な見直しも必要です

猫同士の相性やストレスが原因で、何度もケンカを繰り返してしまうケースもあります。
そうしたときは、環境そのものを見直すことが、関係修復の近道になることも。
たとえば…
- 上下運動ができるスペース(キャットタワー・棚)を用意
- 隠れられる個室的スペースを複数設置
- ごはん・水・トイレを「別々の場所」に分ける
- フェリウェイなどの猫用リラックス製品を活用
さらに、“相性がどうしても合わない”という場合も、決して珍しくありません。そのときは無理に仲良くさせるよりも、生活スペースを分ける工夫が必要です。
飼い主ができる“心のケア”も大切に
猫同士の関係性が不安定だと、飼い主の気持ちにも大きなストレスがかかりますよね。
「どうしてこんなにケンカばかり…」
「うちの子たちは仲良くできないのかな…?」
そんな風に悩んでしまうこともあるかもしれません。
でも大丈夫。猫同士にも“相性の波”や“距離の取り方”があるのです。人間と同じように、無理に仲良くする必要はないんですよ。
大切なのは、「この子たちの関係性にとって、ちょうどいい距離感」を見つけてあげること。
それが結果的に、お互いを傷つけず、安心して暮らせる空間づくりにつながっていきます。
まとめ:ケンカを通じて、猫同士の理解を深めるチャンスに

猫の多頭飼いは、喜びも大きい反面、関係性のバランスがとてもデリケートです。
「ケンカ=悪いこと」ではなく、むしろ“関係性の一部”としてとらえることが大切。
その上で、止めるべきタイミングと、そっと見守るタイミングを見極めていきましょう。
そしてなにより、飼い主さん自身が焦らず、悩みすぎず、寄り添う姿勢を持ち続けること。
それこそが、猫たちの心を落ち着かせ、家族としての絆を育むいちばんの近道になるのです。