猫と暮らしていると、思いがけず「あれ…?なんでここに…」という出来事が起きることがあります。そう、猫がトイレ以外の場所で排泄してしまう「粗相」です。
お気に入りのラグの上、大事な布団、部屋の隅っこ…。
猫を大切にしていても、粗相を見つけると思わず気持ちがざわつくようなこともあるでしょう。
でも、ちょっと待ってください。
その粗相には、猫なりの理由が隠れているかもしれません。
この記事では、叱る前に気づいてほしいことを、やさしく丁寧にお伝えします。
粗相は「困らせるため」ではなく「伝えるため」
まず、最も大切なことを。
猫は人間のように「腹いせ」や「嫌がらせ」で粗相をするわけではありません。
猫にとって粗相は“メッセージ”です。
それは、
- 「なんだかお腹が痛い」
- 「トイレが気に入らない」
- 「最近、なんだか不安なんだ」
という心や身体のSOSであることがほとんど。
叱ってしまうと、そのメッセージを消してしまうことになります。
ですから、まずは「何が起きているんだろう?」という視点で、猫の気持ちに寄り添ってみましょう。

病気のサインを見逃さないで
猫の粗相には、体の異変が関係している場合が多くあります。
特に以下のような病気があると、トイレで排泄するのがつらくなってしまうのです。
尿路疾患(膀胱炎・尿路結石など)
- トイレに行くと痛い
- 排尿が思うようにできない
- 血尿や頻尿がある
こうしたとき、猫は「トイレ=痛い場所」と認識して、別の場所で排泄するようになります。
便秘や下痢
- うんちがなかなか出ない
- 下痢で間に合わない
こうした症状でも、トイレを避けるようになることがあります。
腎不全や認知症(高齢猫の場合)
高齢になると、トイレの場所がわからなくなったり、我慢ができなくなったりすることも。
粗相が増えたと感じたら、まずは一度、動物病院で健康チェックを。
たった一度の粗相でも、病気のサインかもしれません。
トイレ環境がストレスになっていない?
猫はとても繊細な動物。トイレが少し気に入らないだけで、使うのをやめてしまうことがあります。
チェックしたいトイレのポイント
- 掃除が行き届いているか?
→ 排泄物のにおいが残っていると嫌がる猫も多いです。 - 数が足りているか?
→ 複数飼いなら「猫の数+1個」が理想です。 - 場所は落ち着けるか?
→ 人通りが多い、騒がしい場所は避けましょう。 - 砂の種類が変わっていないか?
→ 猫によって好みがあり、砂が変わっただけで嫌がることも。
「トイレが嫌だな…」という小さな不満が積み重なると、粗相につながることがあります。
猫の好みをもう一度見直してみましょう。

心の変化にも目を向けて
猫は、環境や生活の変化にとても敏感です。
例えば…
- 引っ越しや模様替え
- 新しいペットや赤ちゃんの登場
- 家族の不在や帰省
- 飼い主さんの帰宅時間が変わった
こうした変化は、猫にとっては大事件。
強いストレスを感じると、「いつもと違う場所で排泄する」ことで不安を表現することがあります。
特に、飼い主さんのにおいがついた衣類や布団など、安心できる場所で粗相してしまうのは、「ここにいたい」「ここで安心したい」という気持ちの表れかもしれません。
「怒る」より「伝わる」対応を
粗相を見つけた瞬間、つい「こらっ!」と声を荒げてしまいたくなることもあるかもしれません。
でも、猫は“なぜ怒られたか”を理解することができません。
それどころか、
- 怒られる=飼い主さんが怖い
- 怒られるから、こっそり粗相するようになる
という悪循環に陥ってしまうこともあります。
怒らず、冷静に、そしてやさしく。
まずは体調や環境の見直しから、やってみましょう。
粗相を防ぐために、今日からできること
猫の粗相にはさまざまな原因がありますが、飼い主さんのちょっとした工夫で改善することも多いです。
1. トイレを清潔に保つ
毎日こまめに掃除し、定期的に砂を交換しましょう。
2. トイレの場所・数を見直す
静かで落ち着ける場所に設置し、頭数+1個を目安に。

3. 生活の変化には配慮を
模様替えや来客時は、猫が安心できるスペースを確保してあげましょう。
4. 粗相のあとは完全消臭を
においが残っていると、再びその場所にしてしまうことがあります。
専用の消臭スプレーなどでしっかり対策を。
まとめ:粗相は「叱る」よりも「理解する」が近道
猫の粗相は、ただの失敗ではありません。
その背景には、体の不調、心の不安、環境のストレスなど、猫なりの理由がきちんとあります。
だからこそ、叱る前に「なぜ?」を考えてみることが大切です。
猫の行動は、いつだって「伝えようとしている」もの。
その声に、私たちが耳を傾けられたとき、きっと粗相の悩みもやさしく解けていくはずです。
「またやられた…!」と落ち込む前に、そっと猫の気持ちを見つめてみませんか?