猫と暮らしていると、ときどき不意に「コツン」と額をぶつけてくることがあります。まるで頭突きのようなそのしぐさに、思わず「痛っ」と笑ってしまうこともあるのではないでしょうか。
でも実はこの“猫の頭突き”、単なるスキンシップではありません。
猫なりの深い意味と、やさしい気持ちが詰まっているんです。
頭突き=信頼と愛情のしるし
猫が頭をぶつけてくるとき、そこには「あなたのことが大好きだよ」「安心しているよ」というメッセージが込められています。
猫は本来、警戒心の強い動物。とくに頭部は急所でもあり、そう簡単には相手に近づけません。
その頭を自分から差し出してくる=信頼の証なのです。
これは猫同士でも見られる行動で、仲の良い猫同士はよく頭を寄せ合ったり、軽くぶつけ合ったりしています。つまり、“猫流のハグ”と言ってもいいかもしれません。

「頭突き」と「スリスリ」はどう違う?
似たような行動に「スリスリ」があります。顔や体をこすりつけてくる行為ですね。
こちらも愛情表現の一種ですが、より縄張り意識やマーキング行動の意味合いが強いとされています。
それに対して「頭突き」は、もっとピュアでダイレクトな信頼表現。
とくに、目を合わせながら「コツン」とやってくる場合、それはまさに「好きだよ」「信頼してるよ」というラブレターのようなものなのです。
どうして頭でぶつかってくるの?
では、なぜ猫はわざわざ頭をぶつけてくるのでしょうか?
理由はいくつか考えられます。
1. フェロモンをつけて安心したい
猫の額や頬には「フェロモンを分泌する腺」があります。
このフェロモンには「ここは自分の安心できる場所」「大好きな存在だよ」という意味合いがあり、それをこすりつけることで精神的な安定を得ているのです。
つまり、「コツン」とぶつかってくるのは、「あなたは私の大切な存在」と言っているようなもの。
2. 注意を引きたい、構ってほしい
猫は頭突きで「ねぇ、こっち見て」「なでて」などとさりげなくアピールしていることもあります。
スマホに夢中になっているときや、ちょっと無視されているときなどにやってくるのはそのサイン。
そんなときは少し手を止めて、目を見てあげてください。猫にとって大切なのは、あなたの“まなざし”なんです。
どんなときに頭突きをしてくる?
猫によって頻度やタイミングは違いますが、よく見られるのはこんな場面です。
- 飼い主が帰宅したとき:「おかえり!」の合図かもしれません
- リラックスしているとき:一緒にゴロンとくつろいでいる時間に「コツン」
- ごはんを待っているとき:「ごはん、そろそろじゃない?」のサイン
- ベッドの上で甘えたいとき:ナデナデしてほしいときのお願い
どれも安心と愛情が満ちた瞬間。そのタイミングを逃さずに、やさしく受け止めてあげることが絆を深めるカギになります。

飼い主さんにしてほしいこと
もし猫が頭突きをしてきたら、ぜひこうしてみてください。
- やさしく名前を呼ぶ
- 頭や頬をそっとなでる
- 顔を近づけて見つめ返す
- 「ありがとう」と声をかける
これだけで、猫はきっと「通じた!」と感じて、さらにリラックスしてくれるでしょう。
もちろん、しつこくなでたり、急に動いたりするのは逆効果になることも。
猫のペースに合わせたやさしいコミュニケーションを意識してみてください。
潜在ニーズに応える:頭突きをしない子もいます
なかには「うちの子、頭突きなんて一度もしたことないけど…」という飼い主さんもいらっしゃるでしょう。
それはそれで大丈夫。頭突きは個性のひとつであり、愛情の表し方にはたくさんのバリエーションがあります。
- じっと見つめてくる
- 足元でゴロゴロする
- そっと隣に座る
- 手をチョンチョンとする
こうした行動もすべて、猫なりの「大好きだよ」のサインです。
頭突きはその中のひとつにすぎません。

おわりに:その“コツン”は、心のぬくもり
猫の頭突きは、ちょっと不器用で、でもものすごくあたたかな愛情表現。
何気ない日常の中で、それがどれほど大切な信頼のしるしか、あらためて気づかされます。
次に“コツン”とされたときは、ぜひその気持ちにまっすぐ応えてあげてください。
それは、猫とあなたの間に流れる、静かだけれど確かな愛の証なのです。