猫と暮らしていると、目の内側に白っぽい膜がスッと出てくるのを見たことがある人も多いでしょう。これは 「瞬膜(しゅんまく)」 と呼ばれ、通称「第3のまぶた」ともいわれる器官です。普段は目頭に隠れていて目立ちませんが、健康状態や感情と深く関わっています。
この記事では、瞬膜の役割や仕組み、そして飼い主が注意すべきポイントを、事実に基づいて詳しく解説します。
瞬膜(第3のまぶた)とは?
瞬膜は、目頭(鼻に近い側)に位置する 白っぽい膜状の組織 で、英語では 「nictitating membrane」 と呼ばれます。
猫だけでなく、犬、鳥、爬虫類など多くの動物が持つ構造で、目を守るための補助器官として機能しています。
瞬膜の主な役割
1. 目の保護
猫が草むらや砂地を歩くとき、ほこりや小さなゴミが目に入りやすくなります。瞬膜は、そうした異物から角膜を守る「防御シールド」の役割を果たします。
2. 目の潤いを保つ
瞬膜は涙を眼球表面に均一に広げる働きがあります。これにより、角膜の乾燥や傷つきを防ぎます。
3. 免疫的な役割
瞬膜の裏には「瞬膜腺」と呼ばれる涙腺の一部があり、涙と一緒に抗菌成分(リゾチームなど)を分泌することで、目を細菌から守っています。

瞬膜が見えるときは危険信号?
健康な猫では、瞬膜はほとんど見えません。ですが、次のような状態で瞬膜が目立つことがあります。
1. 眠い・リラックスしているとき
うとうとしたり寝起きのときに、瞬膜が少し見えるのは正常です。完全に目を閉じる前に、一瞬だけ瞬膜が現れることがあります。
2. 体調不良のサイン
両目で瞬膜が大きく露出する場合、猫が疲労や脱水、体調不良を起こしている可能性があります。食欲不振や元気のなさが伴う場合は要注意です。
3. ホルネル症候群(Horner’s syndrome)
自律神経のトラブルや耳の病気などが原因で、瞳孔の縮小・まぶたの下がり・瞬膜の露出が同時に現れることがあります。これは動物病院での診察が必要な症状です。
4. 目の炎症や外傷
結膜炎や角膜炎などの炎症、目に異物が入った場合も瞬膜が出やすくなります。
赤み、涙の増加、目やにの増加があるときは、早めの受診が望まれます。
瞬膜は透明ではない

インターネット上では「透明な膜」と表現されることがありますが、猫の瞬膜は白色~ややピンク色で、透明ではありません。そのため、視界を確保したまま獲物を追うような役割はありません。瞬膜の主な働きはあくまで 目の保護と潤い保持 です。
瞬膜のケアは必要?
瞬膜は自然に働く器官であり、通常は飼い主が手を加える必要はありません。
ただし、 目やにが多くて瞬膜に付着している場合は、清潔なガーゼをぬるま湯で湿らせ、優しく拭き取る程度 にとどめましょう。強くこすると逆に目を傷つける可能性があります。
飼い主ができる健康チェック
- 瞬膜が頻繁に見えていないか?
寝起き以外で長時間見えるのは異常のサインです。 - 目の赤み・涙・腫れはないか?
結膜炎や外傷の可能性があるため、早めの受診を。 - 食欲や元気はあるか?
体調不良と瞬膜露出が重なっている場合は、すぐに動物病院へ。
まとめ

猫の瞬膜は 「目を守る自然のバリア」 です。
白っぽい膜が見えると不安になる飼い主さんも多いですが、寝起きなどの一時的なものは心配いりません。しかし、両目で長時間出ている、体調不良が伴う場合は要注意です。
猫の目は健康状態を映す「鏡」のような存在。瞬膜の動きに気を配ることで、愛猫の健康サインをいち早くキャッチできるでしょう。