猫と暮らしていると、膝の上でくつろぎながら「ゴロゴロ…」と喉を鳴らす愛猫の姿に癒されることがあるでしょう。まるで幸せを共有してくれているように感じられるこの音ですが、実は猫の「ゴロゴロ」には、単なる愛情表現だけではない、奥深い理由が隠されています。
今回は、猫が喉を鳴らす理由を科学的・行動学的にひも解きつつ、飼い主が気をつけるべきサインについても解説します。
ゴロゴロ音の正体とは?
猫の喉から聞こえる「ゴロゴロ音」は、喉頭(こうとう)と横隔膜の筋肉の振動によって生じる低周波音です。これが猫の体の中で共鳴し、私たちにも聞こえるようになります。
この音は25Hz〜150Hzほどの低い周波数帯で、人間の赤ちゃんの泣き声よりも低く、心地よい音として私たちの耳にも届くのです。
よく知られている“愛情表現”としてのゴロゴロ

多くの飼い主が経験するように、猫は飼い主に撫でられているとき、抱っこされているとき、眠っているときに「ゴロゴロ」と喉を鳴らします。これはまさに安心している証拠であり、愛情や信頼のサインといえます。
特に以下のようなシチュエーションでのゴロゴロは、ポジティブな感情からくるものです。
- 飼い主の膝の上でうとうとしているとき
- 撫でられて嬉しそうにしているとき
- ごはんをもらって満足しているとき
「ここは安心できる場所」と猫が感じているときに多く聞かれるため、飼い主にとっても幸せを感じられる瞬間ですね。
実は「体調不良」や「痛み」のサインかも?
ところが、ゴロゴロは常に「嬉しい」「気持ちいい」から出るとは限りません。
実はストレス時や体調が悪いときにも、猫は喉を鳴らすことがあります。
これは自分自身を落ち着かせるためのセルフヒーリング行動とされており、以下のようなシーンで見られることがあります。
- ケガをしたときや体調不良のとき
- 獣医さんに診察されているとき
- 恐怖やストレスを感じているとき
このような場合、猫は痛みや不安を紛らわせようとしてゴロゴロ鳴らすと考えられています。
特に、普段と違う場所でゴロゴロしている、鳴き方や表情に違和感がある、食欲が落ちているのにゴロゴロしているなどの兆候があれば、早めに動物病院を受診したほうがよいでしょう。
ゴロゴロ音には「癒しの力」がある?

興味深い研究によれば、猫のゴロゴロ音は骨の修復や痛みの緩和に効果がある可能性があるとされています。
猫がケガからの回復が早い理由のひとつに、このゴロゴロ音の周波数(25〜50Hz)が関係しているという仮説があります。
さらにこの音は人間にもリラックス効果があり、血圧や心拍数を安定させるなど、「癒しの周波数」としても注目されています。
つまり、猫は自分だけでなく、一緒にいる飼い主の心も自然と癒しているのです。
子猫と母猫の“会話”としてのゴロゴロ
生まれたばかりの子猫は、目も耳もまだ開いていません。それでも母猫と意思疎通を図るために、生後2日ほどでゴロゴロ音を出すことができます。
この音は、母猫への「生きているよ」「元気だよ」というサインであり、母猫もそれに応えるように喉を鳴らして返します。
このように、ゴロゴロは猫にとって最初に覚える“言葉”のようなものとも言えるでしょう。
鳴らない猫もいる?

すべての猫が頻繁にゴロゴロ鳴らすわけではありません。中にはあまり喉を鳴らさない猫もいますが、それは性格や個体差、育った環境によるところが大きいです。
たとえば、
- 慎重で警戒心が強い性格
- 他の猫とのコミュニケーション経験が少ない
- 野良出身で人との接触が少なかった など
喉を鳴らさない=信頼していないというわけではないので、猫の他の行動(しっぽの動きやまばたき、スリスリなど)から総合的に気持ちを読み取ることが大切です。
まとめ:猫のゴロゴロは“心と体”のメッセージ
猫の「ゴロゴロ」には、愛情・安心・癒し・自己治癒・不調のサインなど、さまざまな意味が込められています。
その音の背景を知ることで、より深く愛猫の気持ちに寄り添うことができるでしょう。
あなたのそばで喉を鳴らしているその猫は、もしかすると“ありがとう”を伝えているのかもしれません。
ただし、いつもと違う様子が見られたときは、体調不良の可能性も視野に入れて見守ってあげてくださいね。