「去勢や避妊って、本当に必要なの?」
猫を飼う誰もが、一度は向き合うこの問い。
命を扱うことへの重み、そして“自然のままがいいのでは”という迷い──。
けれど、その選択の先にあるのは、猫と人のより平和で健やかな毎日かもしれません。
発情期のストレス、見逃していませんか?
猫の発情期は、飼い主が想像する以上にストレスフルです。
メス猫は、夜通し「アオーン」と鳴き続け、床を転げ回ることも。
オス猫は、発情したメスの匂いを感じ取ると、家中にスプレー行動(おしっこマーキング)をすることがあります。
これは本能的な行動であり、叱っても止まるものではありません。
そして、その状態が1年に何度も繰り返されるのです。
愛猫の健康と精神の安定を考えると、
「自然に任せる」のではなく、「不自然なストレスから解放する」ことも、ひとつの優しさなのかもしれません。

知っておきたい、未避妊・未去勢のリスク
避妊・去勢をしない場合、猫は以下のような健康リスクにさらされます。
メス猫のリスク
- 子宮蓄膿症:命に関わることもある感染症
- 乳腺腫瘍:発情を重ねるごとに発生リスクが高まる
- 不意の妊娠:外に出たほんの数時間で、妊娠することも
オス猫のリスク
- 睾丸腫瘍
- 前立腺肥大
- 喧嘩による外傷・ウイルス感染(FIV・FeLVなど)
また、避妊・去勢されていない猫は、外に出ようとする欲求が強くなる傾向にあり、脱走や交通事故のリスクも高まります。
実際の現場から──命の連鎖が招く“悲劇”
「1匹だけのつもりが、あっという間に10匹に…」
これは、ある飼い主さんの体験談です。
避妊をしていなかったメス猫が妊娠し、そこからわずか1年で子猫が孫猫を産み、多頭飼育崩壊寸前に。
里親を見つけることもできず、経済的にも限界を迎え、保健所に相談せざるを得なかったという話もあります。
「命を大切にしたい」という思いが、結果的に命を苦しめてしまうこともある──。
この現実を、私たちはもっと知る必要があります。
「かわいそう」じゃない。手術の真実

去勢・避妊手術について、「痛そう」「かわいそう」というイメージを持たれる方も少なくありません。
たしかに全身麻酔が必要で、術後に少し元気がないこともあります。
でも、現在の動物医療では、痛みのケアも万全。
術後は一泊入院または日帰りで帰宅できるケースも多く、
数日で元気に走り回る姿が見られるようになります。
また、手術を受けた猫は、より落ち着いて甘えん坊になることも多いのです。
「性格が穏やかになった」「他の猫とのトラブルが減った」などの声もよく聞かれます。
費用や助成金について
手術費用は地域や動物病院によって異なりますが、おおよそ以下のような金額が目安です。
手術内容 | 費用(目安) |
---|---|
メスの避妊手術 | 20,000~35,000円 |
オスの去勢手術 | 10,000~25,000円 |
自治体によっては、助成金制度があることも。
「○○市 猫 避妊 助成金」などで検索してみると、該当制度が見つかるかもしれません。
また、保護猫の譲渡時には、すでに手術済みであることが多いため、里親になる場合も確認してみましょう。
猫のQOL(生活の質)を高める選択

避妊・去勢をした猫は、病気のリスクが下がる分、寿命が延びる傾向にあるともいわれています。
また、繁殖に振り回されず、「遊ぶ」「眠る」「甘える」ことに集中できる穏やかな日常を送れるようになります。
そしてそれは、飼い主にとっても同じこと。
夜鳴きに悩まされることもなく、発情によるストレスや脱走の心配も減る。
人と猫の両方が、より快適な生活を送ることができるのです。
最後に──命に向き合うということ
避妊・去勢という言葉には、重さがあります。
「命を断つ選択」ではなく、「命を守る選択」であること。
それを知ったとき、私たちは初めて本当の意味で、猫と向き合えるのかもしれません。
この小さな命に、どんな未来を用意してあげたいか──
その答えは、あなたの中にあるはずです。